• 室温で長い時間放置して同じ温度にした液体同士でも「濡れない液体現象がごく普通に起こる。
• 液滴とそれを受ける液面（受滴面と呼ぶ）の間がどのようになっているかはビデオによるズームアップでも分からない。
• 液滴によって寿命が違うが、液滴の大きさと寿命の間に特別な決まりがあるようには見えない。
• 液滴は、１個が２個に分裂したり、２個が合体して１個になることがしばしば起こる。
• 分裂ではなく、不連続に大きさが縮小する場合もある。
• 液滴が消滅する直前、上部から照射したレーザー光による液滴の影の中心が必ず明るく輝く。

パリティーの記事とその原著論文をみると、液体間に温度差があれば液滴内に対流が起こり、周囲の空気が 巻き込まれて空気圧の高いポケットを下部に作り、液滴と液面が合体することを妨げるに十分な力を生じるということである。 しかし、我々が観察した条件では、液滴と受け止める液滴に温度差があるとは考えられず、 ナイツェル等が示した「熱キャピラリー現象」とは違う仕組みが働くのではないと考えた。
　そこで我々は
「温度差がない濡れない液体を可能にするしくみは、熱キャピラリー対流による空気圧とは違う何らかの 力が２つの液面の接触・合体を妨げている」という仮説を立てた。

（原理）
　浮遊する液滴下面に熱キャピラリー特有の凹みがないことを示す。
（方法）
　光の干渉によって、液滴と受滴面の間に生じる空隙の形を調べる。液滴を一箇所に留めておくことは できないので、写真撮影ではなく、ビデオ撮影による画像解析することにする。

　装置の概略図を参照
（１）ナトリウムランプの利用・・・光の強さが十分でないのか、画像が不鮮明で解析できなかった。
（２）半導体レーザーの利用・・・光の強さは十分であるが、中心から離れるにつれて間隔が 狭まる当初考えていたニュートン環様の干渉縞は見えなかった。また、干渉縞はなぜか その一部しか撮影できなかった。
（３）液滴の半径が小さいことに対応するように干渉の式を作り直す。その結果、干渉の次数が 小さくなるにつれて、つまり液滴の中心から周辺へ外れるにつれて、垂直入射からのずれが干渉方向の間の 角度を拡大し、干渉の全景を撮影することができないことも分かった。

干渉縞のようすと液滴が消滅する瞬間に影の中心に輝点が見えることから、液滴の下部 に凹みはなく、温度差なしで起る濡れない液体の原因は対流による空気圧の力とは別の反発力によると 結論する。水の場合、半径が1mm程度の液滴の重さは約4*10^-8（kg重）であり、その力が どんなものであるか、今後の研究で明らかにしたい。